クラス替え後、1組の教室では一人ずつ自己紹介が行われていました。
どんどん順番が進み、次はチンゲン君の番になりました。
マーメ先生「次はチンゲン君!お願いします。」
チンゲン君「・・・」
ガタッ!
マーメ先生「キャーーーーーー!!!」

チンゲン「オイラはチンゲン!」「チンゲンサイだけどチ●毛はないのだ〜!そこんとこ、よろしく!」
ガタッ!という机がズレる音と同時に、チンゲン君はパンツを脱いで、机の上で飛び跳ねていました!
「キャーーーーーー!」
教室内に女子生徒たちの悲鳴が響きます。
マーメ「チンゲン君!!!パンツを履きなさーーーーーいっ!!!」
マーメ先生は激怒して叫びました。
チンゲン君「・・・む〜ぅ。オイラのギャグ、あんましウケなかったか・・・ざんねん・・・。」
チンゲン君はそう呟いて、ゆ〜っくりとパンツ、ズボンを履き、席に座りました。
マーメ先生「もーーーう!!!下品な挨拶は厳禁です!!!あなたは後で職員室に来るように!!!」
チンゲン「・・・ごめんチン。」
クリビーは予想外のチンゲン君の行動に衝撃を受けました。そして『チンゲン君』を目の前で見てしまって、複雑な気持ちでした。
クリビーだけでなく、クラス全員、とても驚いたことでしょう。男子生徒の一部はクスクスと笑っていました。
マーメ先生「コホン!みんな、静かに!気を取り直して、次はトマ子さんお願いします!」
マーメ先生は何事もなかったかのように自己紹介の続きを促しました。
ヒソヒソ・・・
クリビー「ねぇ、チンゲン君、君って変わってるね・・・。普通、あんなことできないよ。」
クリビーはこっそりチンゲン君に話しかけました。するとチンゲン君は「ふひひ・・・」と笑ってくれました。マーメ先生を怒らせたことは全く気にしていないようでした。
全員の自己紹介が終わりました。その後、マーメ先生から新学期について色々と説明がありました。生徒たちはみんなノートにメモを取っています。
クリビーはふと、隣のチンゲン君を見ました、すると・・・

クリビー「ギャーーーッ!ダンゴムシッ!?」
チンゲン君の机にはプラスチックの筆箱が置いてありました。筆箱の中を見ると、本来なら鉛筆を入れるはずの場所に、何匹かのダンゴムシが入れられていました。
チンゲン君はどうやら、ダンゴムシ数匹を競争させてレースを楽しんでいたようです。
マーメ先生「クリビーくん、静かに!」
不意に叫んでしまったクリビーは、マーメ先生に注意されました。クリビーは気が散って仕方なかったので、しばらくチンゲン君の方を見ないようにしていました。
ところが、その後もチンゲン君の不思議な行動は続きました。
隣でゴソゴソ動いているチンゲン君。クリビーは、やっぱり気になってしまい、恐る恐るチンゲン君を横目で確認しました。

クリビー「(わー!!!なんだありゃ!?)」
今度は声を抑えて、心の中で思いました。
なんと、チンゲン君は大量の消しゴムのカスを生産して、大きなネリケシ(練り消しゴム)を作っていました!しかもたくさん!
キレイに丸めたネリケシを、ツヤツヤになるまで指でコネコネ・・・完成したネリケシは机の上に整列されていました・・・。
クリビー「(チンゲン君・・・なんて変わった子なんだ・・・!)」
クリビーはとても驚きました。いままでに会ったことのない性格の友達だなと思っていました。そしてもっとチンゲン君のことを知りたいと思いました。
・・・
「起立、礼!」「さようなら〜!」
そんなこんなでホームルームも終わり、1組の生徒たちは声を揃えて帰りの挨拶をしました。今日はもう下校する時刻です。
クリビー「(放課後は何も予定がないし、同じクラスの子を遊びに誘ってみようかな、まずはチンゲン君と・・・)」
マーメ先生「チンゲン君、行くわよ!」
チンゲン君「レッツ・GO!」

チンゲン君はマーメ先生によって職員室の方へ連れて行かれてしまいました。マーメ先生には気の毒ながら、チンゲン君は全く反省していないようでした・・・これから怒られるであろうに。
クリビー「(とりあえず、チンゲン君が戻ってくるまで待ってようかな。その間に、今日一緒に遊べる子に声をかけてみよう!)」
クリビーはまず、廊下に集まっていた、グリンピースのグリンピーくん、かぼちゃのカボちゃん、しょうがのガッちゃんに話しかけてみました。
グリンピー「クリビー!僕たち話すの初めてだね!よろしくね!」
カボちゃん「これから公園でキャッチボールするんだけど、クリビーも行こうよ!」
クリビー「キャッチボールいいね!行く行く!仲間に入れてくれてありがとう!」
ガッちゃん「全然OKだよ!」
グリンピー君たちは3人とも快くクリビーを仲間に入れてくれました。
クリビー「あと、チンゲン君も誘ってみようと思うんだけど、いいかな?」
グリンピー「え!?それは聞いてないな!」
ガッちゃん「・・・チンゲン君かぁ、あの子はちょっと・・・」
カボちゃん「僕は絶対ヤダ!チンゲン君いるなら僕は行かない!」

グリンピー「ごめん、クリビー。やっぱ今日は3人で遊ぶから・・・また今度で!」
クリビー「・・・そっかぁ、わかったよ。」
グリンピー君たち3人はチンゲン君の名前を出したとたん、とても嫌そうな顔をしていました。カボちゃんに至っては「絶対ヤダ!」とまでハッキリと言っていました。
クリビー「(感じが良い3人だと思ったけど、チンゲン君のことは仲間外れにするんだ・・・。)」
クリビーはちょっと悲しくなりました。
???「ハハハ、断られててウケる!カボちゃんの言い方エグかったな〜!」
後ろから聞き慣れた声がしました。クリビーは振り返りました。その声は、教室の中にまだ残っていた、じゃがいものジャガイモ太の声でした。すぐそばに、にんじんのニンジ、ブロッコリーのロコロコがいます。

クリビーは、ジャガイモ太たち3人組のことはよく知っていました。前も同じクラスだったからです。
ジャガイモ太はいつもちょっと意地悪なことを言ってきます。悪気はないようですが、どうやらクリビーのことをライバルとして気になっているようです。
クリビーとジャガイモ太は赤ちゃんの頃からお母さん同士が友達で、長い付き合いということもあります。
クリビー「聞いてたんだね・・・チンゲン君もって言ったら断られちゃった。」
ジャガイモ太「あたり前だろ!あの自己紹介を見たら誰も一緒に遊ぼうとは思わないだろ?それに、グリンピーたちは前もチンゲンの奴と同じクラスだったから、あいつと一緒にいない方がいいってよくわかってるのさ。」
クリビー「確かにチンゲン君てちょっと変わった子だけど、そんなに嫌われてるの?」
ジャガイモ太「・・・いいか?これはチンゲンと前のクラス一緒だった奴から聞いた話だけど、あいつはハエを飼っていて、家の中はハエだらけらしいぞ。」
ニンジ「それ、俺も聞いたー!あと、毛虫を集めてるとか、セミを食べてるとか!この前はエビフライを作るために汚い沼でザリガニ釣りをしてたらしいぜ!」
ニンジもヘラヘラと笑いながら口を挟みました。ニンジはいつもジャガイモ太と一緒にいて笑ってばかりいる子です。
ジャガイモ太「聞いたか?誰がそんな奴と一緒にいたいって思う?チンゲンと遊ぶとどんな目に合うかわからないんだぞ!ゴキブリ食わされたらどうする?それにあの性格、一体何を考えてるのやら、訳がわからない!」
クリビー「そ、そうなんだ・・・。でも、僕はチンゲン君とまだ友達になったばかりで、本当はどんな子なのかよく知らないし・・・。」
ここで黙っていたロコロコが口を開きました。
ロコロコ「クリビー、ちょっといい?」
ロコロコは、頭の回転がよく効率的な考え方ができる少年です。正論を言いますが、やや「理屈っぽい」と言われる性格でしょう。

ロコロコ「クリビー、君のことを思って忠告するよ、悪いことは言わない。今までの情報を聞いて総合的に判断して、チンゲン君と友達になる人生、友達にならない人生、どっちが君にとって幸せかわかる?」
クリビー「え・・・そんな、人生なんて大げさな・・・。」
ロコロコ「大げさじゃない。人生は日々ちょっとした判断の積み重ねで決まるんだ。君はチンゲン君といることで既にグリンピー君たち3人の友達に嫌われた。チンゲン君の下品な行動も見たね?チンゲン君といれば女子からも嫌われるよ?君は自己紹介のとき、クラス全員と友達になりたいと言ったね?ハッキリ言ってそれは無理だ。無理だけど、チンゲン君と関わらないことで、その他多くの友達と仲良くできるチャンスが増えるよ。簡単に言うと、チンゲン君を選ぶか、その他多くの友達をとるか、の2択に絞られるってこと。」
クリビー「え、それってチンゲン君を仲間外れにしなきゃ他に友達ができないってことじゃないか・・・。」
ロコロコ「いや、仲間外れにはならないよ。チンゲン君は、友達といるより1人で行動する方が好きらしいんだ。だからチンゲン君を避けることはお互いにとっていいってことなんだ。ここまで言ったら僕の言いたいこと、わかるよね?君はどうするか『合理的』に考えた方がいいよ。」
ニンジ「すっげ~、ロコロコにいいアドバイスもらって良かったな、クリビー!」
クリビーはロコロコの言っている難しい言葉はあまりよくわかりませんでしたが、チンゲン君と友達になるなと言われていることはよくわかりました・・・。
つづく
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