夜が明け、火曜日の朝が来ました。
今日は学校に行く日です。
クリビーは急いで支度をして学校に向かいました。
・・・
クリビーが1組の教室に入ると、なにやらその場は少しざわついていました。
そして、またチンゲン君の怪しい動きを感じました・・・

トマ子「キャー!!」
チンゲン君の後ろの席のトマ子が悲鳴を上げています。
トマ子の悲鳴につられ、1組の生徒たちも次々とワーッ!キャーッ!と声を上げています。
騒ぎの理由はすぐにわかりました。
チンゲン君が教室に虫を持ち込んでいたのです。

チンゲン君の机の上には透明なプラスチックの虫かごがあります。
その中に、得体の知れない虫の姿が見えます。
教室はちょっとしたパニックになっています。
チンゲン「あ、クリビー。間に合って良かった〜!これ、昨日言ってた珍しい・・・」

チンゲン君はこの虫をクリビーに見せようと思って持ってきたようです。
クリビー「おはよう、チンゲン君!これ、何の虫なの!?」
チンゲン「これは・・・」
マーメ先生「おはようございま、、、」

チンゲン君がしゃべりかけた途端、ちょうどマーメ先生が教室に入ってきました。
トマ子「先生〜!チンゲン君が変な虫を持ち込んでます!どうにかして下さ〜い!」
トマ子の訴えに便乗して教室は更に騒がしくなります。
チンゲン「シッ!しずかに!」

突然、チンゲン君はクラス全員を黙らせるような空気を作りました。
マーメ先生「・・・」
いつもなら注意するマーメ先生ですが、黙ってチンゲン君の様子を見ています。
チンゲン君の虫かごに、クラス全員の注目が集まります・・・。

虫かごの中には、大きなサナギの姿が見えました。
クリビー「!」
なんと、サナギの皮が破れ、羽を縮めた蝶がゆっくりと姿を現しました。

その蝶は、ゆっくりゆっくりと大きな羽を広げます。

チンゲン君が虫かごのフタを開けると、蝶は窓の方へ飛び立ってゆきました。

クリビー「チンゲン君!ちょうちょが逃げちゃうよ!いいの!?」
チンゲン「いいのいいの〜。あいつは自由に生きて厳しい自然を生き抜くのだ・・・。」
蝶は空へ羽ばたいていってしまいました。そしてその姿はすぐに見えなくなりました。
誰も見たことのない、珍しい蝶でした。その美しい羽化に驚いたみんなの気持ちは一瞬、同じになったようでした。
パチパチパチ・・・!
マーメ先生が突然、拍手をしました。
それにつられて、クラスメイトのみんなも次々と拍手をしました。
もちろん、クリビーも。
チンゲン君に向けて、みんなの拍手が届きました。
マーメ先生「チンゲン君、綺麗な蝶の羽化をみんなに見せてくれてありがとうね。これはなかなか見られるものじゃないわ。」
チンゲン君「ふひひ。」
チンゲン君は恥ずかしそうに笑いました。
マーメ先生「だけど、世の中あなたと同じく虫が好きな人だけではないの。虫が苦手なお友達の気持ちも考えてね。わかったかしら?」
チンゲン「ごめんチン。」
ワハハハハハハハ・・・
教室は笑い声で賑やかになりました。チンゲン君の『ごめんチン』がウケたようです。
相変わらず、ふざけたような返事のチンゲン君。でも、このときのチンゲン君は本当に反省しているような感じがしました。マーメ先生の、お友達の気持ちを考えて、という言葉が彼に届いたのです。
その後、朝礼が終わると、クリビーは隣の2組の前に行きました。2組の朝礼が終わるのを待ち、モモビーとネギーンがこちらに気づくよう、廊下から合図をしました。
クリビー「モモビー、ネギーン、昨日は本当にごめん。」
廊下に出てきた2人の顔を見て、クリビーは素直に謝りました。

モモビー「クリビー、おれっちもごめん。クリビーの気持ち考えないで、変な冗談言っちゃってさ。」
ネギーン「僕もごめんなさい。1人になりたいときもありますよね。しつこく話しかけちゃって・・・」
クリビー「2人は謝ることないよ!僕がどうかしてたんだ。」
モモビー「ちなみに、今はもう、元気なのかよ?なんか悩んでたみたいじゃん?」
クリビー「うん、もう大丈夫!」
ネギーン「良かったです!」
モモビー「それならよかった!じゃあ、このケンカの話はもう一切なかったことにしようぜ!」
すっきりした性格のモモビーはそう言ってすんなりと仲直りをしてくれました。優しい性格のネギーンも、喜んで仲直りを受け入れてくれました。
クリビーにとってクラス替え後の初日は色々とありすぎた一日になりました。
クリビーと友達になったチンゲン君は、それ以来、他のクラスメイトからも声をかけられるようになってゆきました。
チンゲン君は少しだけ友達の気持ちを考えて行動するようになったのかもしれません。
みんなも、チンゲン君の虫好きなところや面白いところを認めるようになったのかもしれません。
これからもクリビーたちの学校生活は続きます。今後の学校でのおはなしも楽しみにしていてね。
おしまい
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