お花見は大変だ!(後編)

おはなし

クリビー、モモビー、ネギーンの3人はお花見スポットとして有名なイコイコ公園に到着しました。

ところが、お花見会場となっている公園にはすでに人がたくさん集まっていました。

モモビー「うわぁ~、、、なんじゃこりゃ!!すごい人の数っ、、、。」

3人は周囲を見渡しましたが、レジャーシートを敷けそうな空き場所が見つかりません。

クリビー「こんなに混んでいるとは・・・これじゃあ、お花見ができないじゃないか!」

ネギーン「そんなあ、せっかくサクラのお花が満開なのに、、、」

大勢のお花見客の笑い声で騒がしい中、3人だけは悲しい顔をしていました。

すると、また聞き覚えのある声がしました。

ナスビー「おお!クリビー、モモビー、ネギーン、君たちも来たのか!」

そこにはナスビー博士が一人でレジャーシートの上に座って手を振っていました。

クリビー「あ!ナスビーはかせだ!」

クリビーたちはナスビー博士の方へ近づいていきました。

ナスビー「はっはっは!君たちは『場所取り』をしなかったのかね?」「人気のお花見スポットはすぐに人でいっぱいになるから『場所取り』をするのが基本なのだよ。」

ナスビー博士によると、サクラが満開になる数日前には良い場所を見つけて『場所取り』をしなければいけないとのことでした。『場所取り』とは、あらかじめレジャーシートを敷いておき、使う人の名前と時間を書いた貼り紙や立て札をして、使う場所を取っておくことだそうです。

それを聞いたクリビーとモモビーはナスビー博士に詰め寄りました。

クリビー「そんなこと知らなかったよ!この前会ったときに教えてくれればよかったじゃないか!」

モモビー「そうだそうだ!自分1人だけ場所取りしておいて、ナスビー博士は最低な大人だ!」

クリビーとモモビーの2人はナスビー博士に怒って言いました。

ナスビー「ははは( ̄∇ ̄)悪かったね~、場所取りのこと言うのをすっかり忘れてた!」

怒られていてもナスビー博士は片手で頭をかきながら笑っているだけでした。

ネギーン「それにしても博士、こんなところで『お1人で』お花見ですか?」

ナスビー「(ギクッ・・・!)」

ネギーン「う~ん、なんだか怪しいですねぇ・・・」

続けてクリビーも言いました。

クリビー「たしかに。ネギーンの言う通り、博士が1人でお花見なんて変だ!」

ナスビー「(ギクッ・・・!)な、なんだ君たちは、また急に、失礼な!」「私は科学者なのだ!こうして自然の美しさを1人でゆっくり観察するのも必要な仕事なのだよ。」

ナスビー博士は焦ったように早口で言い返しました。

モモビー「うそだぁ~、怪しすぎ!」「おっさん、いつも花になんて興味ないじゃんか!」

モモビーも続けて言います。

ナスビー「コラ!モモビー、目上の人に向かっておっさんと言うのは失礼だぞ!」「花を見るのは素晴らしいことだぞぉ~?ま、君たち子供にはまだわからないのさ!花はいいぞ~、花を見てると元気になるのだ。」

クリビー、モモビー、ネギーンの3人は疑うような目でナスビー博士を見ています。

ネギーン「あー!博士がここでお花見をしている理由、わかりました!」

ナスビー「へ??」

ネギーンはそう言って、博士のすぐ隣にあるレジャーシートの前に行きました。

そのレジャーシートの場所にはまだ誰も人が来ていません。

そこには場所取りの立て札が付けられていました。

クリビー「ええと、『シロナスいいん、じょしかい、今日のお昼から使います』だって!」

立て札によると、町の病院である、シロナス医院の看護師さんたちが女子会をここでやるとのことでした。

ここでちょっと説明するね、シロナス医院は、医院長のシロナス先生が開いている病院です。そこで働いている看護師さんの中に、ナスミさんという美人でかわいい女性がいます。ナスビー博士は、ナスミさんのことが好きなのです。

▲キャラクター紹介:ナスミさん(シロナス医院で働く看護師さん。やさいの中では美人でかわいいし、やさしい性格の女性。)

モモビー「はは~ん。博士~、ここにナスミさんたちが来るのを知って、隣に場所取りしたんだ~!」

ナスビー「わわわ!そ、そんなわけないだろう!?私はホントに1人でゆっくりサクラを眺め・・・」

ナスビー博士は慌てています。

そうこうしていると・・・

???「でねー、来てくれるんだって!」

???「そうなのね、先生お忙しいのに、お誘いしてよかったのかしら?」

???「いいのよ~、先生がOKって言ってくれたんだから!超楽しみー♪」

キャッキャッという楽しそうな女の人たちの笑い声が近づいてきました。

ネギーン「大変です!シロナス医院の看護師さんたちがこっちに向かって来ます!!!」

ナスビー「な、なんだってー!」

ナスビー博士は跳ね上がって、白衣のポケットから手鏡とヒゲソリをサッと取り出しました。

モモビー「うげっ!おっさん、まさかここでヒゲ剃るつもりかよ!!!」

ナスビー「うるさいっ!家で剃ってきても、公園に着くころには生えてきてしまうのだ!」「ナスミさんにお会いする直前に剃ろうと思ったのだ!って、あ・・・言ってしもうた・・・!」

クリビー「もうバレバレだから、この際どうでもいいよ!」

モモビー「仕方ないな、おっさん!おれっちたち、今回は邪魔しないから、ガンバレよっ!」

ナスビー「違う!私は本当に純粋な気持ちでお花見を~!ぐぬぬ~!」「ま、いいさ、君たちの好きなように思ってくれ!!!」

ネギーン「はかせ!そんなこと言ってないで、早くヒゲ剃らないと!!!」「もうナスミさんたちが来ちゃいますよー!!!」

ナスビー「わわわ!まずいっ!急がなければっ!!!」

ナスビー博士は超特急でヒゲを剃りました。

すると、ナスミさんたちがちょうど隣のレジャーシートに到着しました。

ナスミ「あら、ナスビー博士!こんにちは~。」「ちょうどお隣で、びっくりしました!博士もお花見にいらしてたんですね。」

ナスビー博士に気づいたナスミさんが声をかけました。

ナスビー「ナ、ナスミさんじゃないですか!いや~!偶然、すぐ隣の場所でしたね!」「運命というのでしょうか・・・素敵な偶然ですね!」

ナスミ「???」「・・・たしかこの前、町のカフェでも偶然、後ろのお席にいらしたのでビックリしましたが、不思議ですね。」

ナスミさんは不思議そうな顔をして返事をしていました。

モモビー「(うわ~・・・おっさん、結構やってんなあ・・・)」

クリビー「(こういうのストーカーって言うんじゃないの?)」

ネギーン「(シッ!2人とも声が大きいですよっ!)」「(この場は博士を見守ることにしましょう!)」

モモビー「(そうだな!なんか面白そうだし!)」

クリビーたちは小声で話し、ナスビー博士の様子を観察することにしました。

ナスビー博士は自分のレジャーシートに座り、一生懸命、ナスミさんに話しかけていました。

ナスミさんの同僚の女性2人はちょっと迷惑そうな顔しています。

ナスミの同僚その1「・・・誰かしらあのおじさん。ナスミの知り合い?」

ナスミの同僚その2「私たちせっかく集まってるのに、隣から話に入ってきてちょっと迷惑ね・・・」

ナスミさんも少し困った様子です。ナスミさんの同僚2人はヒソヒソと話し、ナスビー博士のことを怪しんでいるみたいです。

クリビー「うわ~、博士、普段ヒゲを剃ることなんてないから・・・」

モモビー「剃り残し???青ヒゲめっちゃ残ってるんだけど!やべーな!」

ネギーン「もう痛すぎて見てられないです・・・」

ナスビー博士の口上は、ヒゲを剃った跡がはっきり青々としていました。

そうこうしていると、若そうな男性の爽やかな声が聞こえてきました・・・

???「みんな~、遅くなって申し訳ないね。」「思ったより引き継ぎに時間がかかっちゃって・・・」

そこには、シロナス医院の医院長、シロナス先生が登場しました。

▲キャラクター紹介:シロナス先生(シロナス医院のお医者さん。若いのに腕も良く、誰にでも親切。やさいの中ではハンサムな顔のため、女の子たちから人気。)

ナスミさんと同僚女性2人は声をそろえて言いました。

「シロナスせんせ~い!!!!!!!!」

ナスミ「先生、お疲れ様です!お忙しい中、来ていただいてありがとうございます!」

ナスミさんは丁寧にあいさつをしました。

ナスミの同僚その1「先生~、遅いですよ!私たちずっと待ってました~!!!」

ナスミの同僚その2「プライベートの先生とお会いできるの尊いですぅ!!!」

ナスミさんたち3人はナスビー博士しかいないときより声のトーンが高くなりました。

シロナス先生の登場で3人とも一気に表情が明るくなりました。

それを見たナスビー博士は・・・

クリビー「(ねえ見て!ナスビー博士のヒゲ、もう生えてきちゃってる!!!」

ネギーン「(ストレスで一気にヒゲが生えたのかもです・・・)」

モモビー「(あーあ、、、イケメンなシロナス先生も一緒だったとは。)」「(誤算だったな、おっさん・・・)」

女性陣から歓迎されるシロナス先生の登場に、ナスビー博士はとても焦りイライラしている様子でした。

やがてナスミさんたちはナスビー博士を無視してシロナス先生と楽しく談笑し始めました。

クリビー「(どうしよう、このままだとナスビー博士はナスミさんと話せるチャンスがなくなっちゃうよ。)」

モモビー「(そうだな、今日のところはおっさんを応援するって決めたから、なんかアドバイスしてやるか!)」「(おーい!おっさん!!!このままだとシロナス先生にナスミさん取られちゃうよー!何か話しかけないとっ!!!)」

クリビーたちはナスビー博士だけに聞こえるように言いました。

ナスビー「(わかっとる!よーし!話しかけるぞ!)」

そう言うと、ナスビー博士は、なぜか、ナスミさんではなく、シロナス先生の方に近づいてゆきました。

ナスビー「やあやあ~!シロナス先生じゃないですか!さっきから近くにいるのに、私には挨拶もなしに?女の子と話すのに夢中?ですか?」

ナスビー博士は悪意に満ちた顔でシロナス先生に詰め寄っていきました。

シロナス「わっ!こ、こんにちわ、、、ナスビー博士!すみません、お隣にいらしてたんですね。気がつかなくて、大変失礼しましたっ!」

急に話しかけられてびっくりしているシロナス先生です。

モモビー「(おっさん、話しかけるって、シロナス先生の方に?)」「(何考えてるんだ・・・)」

モモビーは呆れて苦笑いしています。

ナスビー「シロナス先生、いいんですか?こんなところで女の子たちと楽しく遊んでいて?」「病院はどうしたんですか?自分の都合で本日休業ですか?」「看護師さんたちも大変ですね~、上司に誘われたら断れないですもんね~?職権乱用、公私混同ですか?」

ナスビー博士はシロナス先生に嫌みな質問攻めを続けました。

ナスミの同僚1「ちょっと!そこの青ヒゲ・・・いや、青ナスの人!いきなりシロナス先生に向かって何を言うんですか!?」

ナスミの同僚2「そうよそうよ!先生は私たちからお誘いしたのよ!お忙しい中、お仕事の合間を縫ってなんとか来てくださったのよ!」

ナスミ「ナスビー博士、病院のことはご心配なさらないで。看護師たちは交代で勤務していますし、シロナス先生の弟の『ナスのすけ』さんもお医者さんなので、今日は代わりに病院に出てもらっているんですよ。」

ナスビー「・・・ふぐっ!女の子たちからお誘いされただと・・・!?それに、弟も医者だなんて・・・ううう。」「邪魔してやろうと思ったのに、なぜ女の子たちがこんなにフォローに入ってくるのだ・・・羨ましすぎるぅ〜・・・。」

ナスビー博士はショックを受けてその場に倒れ込んでしまいました。

ナスミ「ナスビー博士、大丈夫ですか?ご気分でも悪いのでしょうか・・・?」

ナスミの同僚1「ナスミ、いいから早く乾杯しようよ~!」

ナスミさんだけはナスビー博士を少し心配しているようでした。しかし、同僚の女性に声をかけられ自分たちの輪に戻っていってしまいました。

クリビー「(博士、大丈夫?)」

クリビーは絶望している博士に近づき、話しかけました。

ナスビー「うう、なんで同じナスでも女の子からの待遇がこんなに違うのだ・・・!なに、ちょっと頭が良くて、顔がいいだけじゃないか・・・!」

博士は独りでブツブツ愚痴を言っています。

クリビー「(そういうところなんじゃない?)」

クリビーは呆れていました。すると、

ポツリ・・・ポツリ・・・

雨粒が1つ・・・2つ・・・

そしてすぐさま空の色も暗くなってきました。

クリビーが手を空に向かってかざすと、ピチャリ、ピチャリ、大粒の雨がどんどん降ってきていました。

クリビー「大変だ!雨だ!」

周りの人たちも雨に気づいたようです。みんな慌てて食べ物や荷物をまとめています。

ザー!ザー!

雨は急速に強くなり、すぐにどしゃぶり状態となってしました。

周りの人たちもこの雨に大慌て、大混乱です。

みんな急いでレジャーシートを片付け、その場から退散して行きます。

ナスビー「こりゃ花見どころじゃない!撤収だー!!!」

ナスビー博士も、シロナス医院の人たちも荷物をまとめて帰ろうとしています。

ネギーン「今日の天気予報では雨が降るなんて一言も言ってなかったんですけどね・・・!」

モモビー「ほんとだな!ほら見ろ、誰も傘を持ってきてないぜ!」

ナスビー「そうだ!!!こういうこともあろうかと、私は傘を持ってきたのだ!!!」

モモビー「おお!おっさん、ナイスじゃん!!」

クリビー「博士、このピンチはチャンスだよ!」「早く、ナスミさんを傘に入れてあげて!」「それでお家まで送ってあげたら好感度アップだよ!(?)」

ナスビー「おおお!!!それはいいアイディアだーーーー!!!」「よーし勇気を出してーーーー(ナスミさん!!!)どうぞ、よかったら私の傘に入って下さい!!!」

ナスビー博士は広げた雨傘を差し出し、ビショビショになっている緑色のナスのヘタを内側に入れてあげました・・・

ナスビー「ナスミさ・・・って!わああああああああああああああああ!!!」

ナスビー博士は大声で叫びました。

なんと、博士の傘に入っていたのはシロナス先生でした。

ナスミさんだと思っていた緑色のナスのヘタはシロナス先生の頭だったのです。

シロナス「ナスビー博士、すみません、僕、傘を持っていなかったのでとても助かりました!」「ありがとうございます!」

ナスビー「(なんでお前なんかを傘に入れてやらなきゃいかんのだーっ・・・!)」「ナ、ナスミさんたちはどこへ行ったんですか??」

シロナス「さっき、タクシーを呼んだので従業員たちは先に帰らせました。」「僕は家が近いので、歩いて帰ろうかと思ったんですけど、いやあ~、思ったより強い雨だったので、本当に助かります!」

ナスビー「ぐぬぬ・・・こんなはずでは・・・」

シロナス先生は素直にナスビー博士が親切な人だと思っているようでした。

ナスビー博士はナスの元々の青い顔を更に青くして、シロナス先生と愛愛傘で家の方へ帰ってゆきました。

突然の大雨でサクラが一気に散ってしまったお花見会場のイコイコ公園。

みんな早々に帰り、その場に残されたのはクリビー、モモビー、ネギーンの3人になりました。

3人だけはちゃんとお花見ができなかった心残りで、雨の中その場にたたずんでいました。

モモビー「・・・どうする?おれっちたちもそろそろ帰るか?」

クリビー「そうだね。帰ろうか。」

ネギーン「2人とも、ちょっとだけ待って、ほら!」

ネギーンは空を指さして言いました。よく見ると、西の方の空から少しだけ光が差し込んでいます。

ネギーン「もう少しで雨がやむと思う。」

ネギーンがそう言ってしばらくすると、次第に雨は弱くなってゆきました。

クリビー「ほんとだ!雨、やんだね!」

3人が辺り一面を見渡すと、そこにはサクラのじゅうたんが広がっていました。

サクラの花びらが散り、雨で運ばれ、地面いっぱいに薄ピンク色が流れていったのです。

かすかに差し込む日の光に雨の雫がキラキラと輝いて、とてもきれいです。

ネギーン「きれいですね!」

モモビー「散っちゃったけど、こういう花見もあり?だな!」

クリビー「大変だったけど、お花見って良いね!」

こうして3人はお花見の1日を楽しむことができました。

おしまい

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