サービスエリアでの休憩を終え、クリビーたちを乗せた車は再び高速道路を走り始めました。
クリビー「わー!海だ!!!」
車の窓から、青い空と青い海の、開けた景色が見えます。
今日は天気も良く、太陽の光が海にキラキラと反射してとてもきれいです。
車はこのまま海岸線の道を進んでゆきます。
・・・
これから向かおうとしている場所は『スナスナ海水浴場』だと聞かされたクリビーたち。
クリビー、モモビー、ネギーンの3人とも、聞いたことのない海です。
クリビー「ねぇ、博士。すぐそこにも海があるけど、ここじゃなくて、わざわざもっと遠くまで行くの???」
ナスビー「そうさ!この近くの海水浴場は人気過ぎてな。君らよりちょいと年上の、イケイケな若者たちが多くて落ち着かんのだ。」
モモビー「なるほど。おっさん禁止の海ってことか!」
ナスビー「モモビー、今ここで車を降りてもらったもいいんだぞ。」
モモビー「はい、ウソです、ごめんなさい。」
クリビー「僕たちが行く海は『穴場』だって言ってたけど、『穴場』ってどういう意味?有名じゃないけど、イイ感じってこと?」
ナスビー「そうさ!『穴場』ってのは、知る人ぞ知る、隠れた名所ってことだな!」
クリビー「そうなんだ〜。なんか楽しみになってきた!」
ナスビー「そうだろ?スナスナの海は心落ち着く静かなところでな。んザザ〜ァ・・・!っという波の音を聞きながら・・・抱きしめて〜〜〜、もう一度だけ俺を見つめて欲しい〜〜〜♪」
ネギーン「・・・何の歌ですか?」
モモビー「おぇ〜・・・なんかその歌、おっさんが歌うと気持ち悪いぜ!」
ナスビー「モモビー、今からマルナス助手と2人で電車で帰ってもらってもいいんだぞ。」
モモビー「冗談だってば!勘弁してくれよ!」
マルナス「ワタシまで道連れデスカ!?っていうか、ワタシってそのために連れて来られたんですネ!!!」
マルナス助手が誘われた理由もはっきりとしました。
車の中は相変わらず賑やかで、しばらくの間、絶えず会話が続きました・・・。
・・・
車は道なりに走り続けました。
揺れのない単調な走りが心地よく、気がつくとクリビーは寝てしまっていました。
・・・
グーーーン、、、!グーーーン、、、!
急なカーブが続き、車は右へ、左へ、何度も大きく揺れました。
この揺れで目を覚ましたクリビー。
外を見ると、さっきまでの開けた景色とは違い、海が少し見えたり、見えなかったり。車は海沿いの狭い峠道をクネクネと進んでいました。

↑※作者の都合により突然の高画質でお送りしています。
ナスビー「おーい、もうすぐ着くぞ〜!」
モモビー、ネギーンも眠っていたようです。ナスビー博士の呼びかけで、2人とも目を覚ましました。
ナスビー「ほら、着いた!」
ナスビー博士は砂浜よりも高台になっている海水浴場専用の駐車場に車を停めました。
一同は車から降り、先頭のナスビー博士に続いて海辺へと続く階段を降りてゆきました。

クリビー「わーい、わーい!」
モモビー「イェーイ、イェーイ!」
ネギーン「やった〜、やった〜!」
さっきまで寝ていた子供たちですが、車から降りた途端、もう元気いっぱい!大はしゃぎです!
ナスビー博士は、車のトランクから取り出した大きな黒いカバンを持っていました。どうやらこの中に、例の発明品が入っているようです。
クリビー「クンクン・・・あれ?なんか変な臭いがするんだけど。」
ナスビー博士のすぐ後ろを歩いているクリビーがモモビーに言いました。
モモビー「くっせ〜よな?おれっちも思った。」
モモビーはクリビーとネギーンに聞こえるよう、そう言いました。
ネギーン「ヒソヒソ・・・きっと、香水ですよ!」
モモビー「香水?香水ってなんだ?」
ネギーン「香水というのは、いい匂いのする、大人のおしゃれのためのアイテムなんですよ。」
クリビー「その香水を博士が・・・?」
モモビー「おえ〜、これがいい匂い?おれっちは苦手だ・・・。」
ネギーン「大人になると、こういう匂いが好きになるみたいですよ。」
クリビーたちに香水の匂いの良さは全く理解できませんでした。それにしてもナスビー博士はなぜ香水を・・・?
ナスビー「おー!海だー!海に来たぞー!」
子供たち3人はヒソヒソ話している途中でしたが、こうしてようやく目的の海に到着することができました。
ナスビー「ほら、いい感じのビーチだろ!」
クリビー「わーい!海だ海だ〜!」

そこには、半月状の形をした、こじんまりとしたビーチがありました。
透き通った青水色の海に、明るい黄土色の砂浜が広がっています。
ネギーン「ここが、ナスビー博士の言っていた『穴場』と呼ばれるスナスナ海水浴場ということですね!」
モモビー「すげー!確かに、おれっちたち以外に誰もいないし、イイ感じの場所だな!」
クリビー「ほんとだね!ナスビー博士、僕たちをこんなに素敵な海に連れてきてくれて、ありがとう!」
ナスビー「・・・」
クリビー「ナスビー博士?」
クリビーたちの目の前にいたはずのナスビー博士が、気がつくと、もう近くにいません。
博士は1人急ぎ足で浜辺のどこかに向かっていました。
ナスビー博士「あの小屋か・・・。」
博士の進む先には、浜辺にポツンとある、小さな小屋がありました。
マルナス「もう!ハカセったら勝手なんだカラ!」
モモビー「しょうがないな、おれっちたちもおっさんについていくか!」
1人、小屋の前で立ち止まっているナスビー博士。
博士以外の4人も、小屋の前に着きました。
その小屋は近くで見るとボロボロでした。とても人が使っているようには見えません。
博士はサングラスをしたままの顔で、何か思うことがあるのか、そのボロ小屋を見つめ、無言で立たずんでいます。
ナスビー「・・・。」
小屋の正面には朽ちた看板のようなものが付いていました。看板には『海の家〜海岸物語〜』と書かれているのが、辛うじて読めました。
マルナス「・・・ハカセ、もしかして、ワタシたちが行こうとしていた海の家って、ここのことデスカ?」
ナスビー「・・・うむ、そうだ。」
マルナス「うむ、そうだ・・・じゃないデスヨヨ!どう見ても、絶対やってないじゃないデスカーーー!」
マルナス助手の大きな声がビーチに響きました。
クリビー「そ、そんな!ここが海の家!?」
モモビー「なんだってー!?」
ザザァ〜・・・
そしてまた波の音が沈黙の中に聞こえます。
周りを見渡しても、このボロ小屋以外にお店をやっていそうな建物は一切見当たりませんでした。
マルナス「博士、ワタシたちのお昼ご飯は、どうするつもりデス!?みんな博士をあてにして来たんですヨー!」
ネギーン「そんなぁ、、、僕、海の家でご飯食べるって聞いたから、飲み物だけでガマンしてたのにぃ〜・・・!」
ナスビー「・・・15年前は営業していたんだがな。」
マルナス「15年前!?博士!そんな昔の情報をあてにするなんて!バカデショ!?今お店がやってるかくらい調べておいてクダサイヨー!一体、どうするんですか!?」
マルナス助手は、持ってきたスマートフォンで他のお店を探してみましたが、この近くでは一件も見つかりませんでした。
クリビー「人がいな過ぎると困ることもあるんだね・・・。」
モモビー「関心してる場合かよっ!どうすんだよ〜!!!おれっち、お腹減ったよ〜!!!」
ネギーン「モモビーはさっきあんなに食べてたんだからいいじゃないですか!僕なんか、ワァーン!」
ナスビー「・・・」
こんな状況になっている中、ナスビー博士は慌てる様子もなく、いつもの誤魔化し笑いをすることもなく、ただ黙っているだけでした。
博士はその廃屋を見つめながら、何か別のことを考えているようでした。
マルナス「ハカセ!何か言ってクダサイヨ!」
クリビー「博士!どうにかしてよ!」
モモビー「そうだそうだ!おれっちたちの昼飯、なんとかしろー!」
ネギーン「ワァーンワァーン、お腹空きましたよ〜!」
???「アンタたち、そんなに騒いでどうしたんだ?」
子供たちがワーワーと騒ぐ中、ナスビー博士はどこかで聞いた記憶のある声を耳にしました。
ナスビー「・・・あなたは!」
その声の主は、ボロ小屋の影から姿を現し、こちらに向かってゆっくり歩いて来ました。
つづく
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