パパ活おじいちゃんの背中

日記

どうも麦です!

今日は麦が独身だった頃に経験したお話をしたいと思います。

結婚前、そうですね、まだ麦が現在の夫と出会う前の頃です。麦は東京で仕事をしており、仕事後に一人で居酒屋やBARに通うことが多くありました。職場の後輩を飲みに誘うことはあっても、その回数は少なく、圧倒的に一人で飲むことが多かった麦です。その理由は二つあり、一つは一人で行動していると新しい出会いがあること、二つ目は職場への不満が多く、仕事の話を一切したくなかった、思い出したくなかったことがありました。ちなみに、職場の上司が麦を飲みに誘ってくれることはほぼありませんでした。麦は上司から好かれていなかったのでしょう。後輩は麦が無理矢理誘っていたので、今考えると迷惑だったかもしれません。

さて、飲みの場での良き出会いを期待していた麦ですが、麦が通っていた居酒屋やBARは年配のお客さんが多く、なかなか気の合う人と出会えることはありませんでした。同じ年くらいの女性と話が合って連絡先を交換したこともありましたが、今度どこかで飲みに行きましょうと言ったきり、また連絡を取り合うこともなかったのです。今考えると、今に繋がる良き出会いは一つも無かったという結果になりました。でも、今に繋がらない出会い、すれ違いというか、一人で飲みの場に行くことで、色々な人間模様を垣間見ることができました。だから、あのときの時間と飲み代が決して無駄になることはなかったと思っています。そんな中、麦が経験した一つのエピソードをご紹介します。

ある日、いつものように麦はよく行く居酒屋で夕食代わりに一杯やり、二軒目にまたよく行くBARへと向かいました。麦のお気に入りのBAR「ファイブ」はとてもクラッシックな雰囲気の、一枚板の木目が素敵なカウンターのBARでした。BARファイブのマスターは麦と年齢が近く、麦が女性ということもあってよく気を遣ってくれていました。「もしお客さんにしつこく絡まれたら注意しますんで。」と、麦が不快にならないよう、いつも配慮してくれていました。

麦がBARファイブに来て少し時間が経った頃、、、22時、23時頃だったでしょうか、麦の隣に、英国紳士風のきちんとした格好のおじいさんが座りました。BARファイブのマスターは「あ、麦さん、安心して下さい。このGさん(英国紳士風のおじいさんの苗字)はいい人ですから!」そう言い、Gさんがこの店のかなりの常連さんであることを教えてくれました。そのとき他にお客さんがいたのか、いなかったのか、今は覚えていませんが、Gさんはマスターと私と、三人で会話をし始めました。

Gさんの話によると、Gさんは今、交際クラブというのに入会していて、18〜25歳の女性(いわゆるパパ活女子?)とスマホを通じて出会い、余生を楽しんでいるとか、、、。Gさんはどう見ても70歳以上、80歳近くなんじゃないかという見た目でした。しかし、雰囲気で言うと政治家の麻生太郎のような、きちんとしたスーツの着こなし、ハットを被って、おしゃれで上品なオーラがあり、話していていやらしい感じもなく、マスターの言う通り、変な人ではないんだな、安心できる感じではあるなと思いました。ただ、こんな穏やかそうなおじいさんがまだ若い女の子を求めていると思うと気持ちが悪い。気持ちが悪いんだけど、なぜか、普段よくネット上で聞くパパ活おじさんに対して思う気持ち悪さ、羨ましさ、腹立たしさとは違ったものを感じた麦でした。そう、気持ち悪いけど、なんだか、こんなに上品なおじいさんなのに残念、、、という気持ちだったと思います。

そして、Gさんは私にスマホの画面を見せてくれました。「今、この3人の女の子と会ってるの。でもこの子は会う度にブランド物を買って欲しいとばかり言うからね、こちらからお別れをお願いしたの。あとの2人の子はプレゼントは欲しがらないから、純粋でいい子なんだよ。」その女の子たちの顔写真を麦に見せるおじいちゃん。どう、こんなワシでもこんなに若い子とお付き合いできるんだよ、すごいでしょ?ワシってモテるでしょ?と、自慢したかったのかもしれません。Gさんはこの辺りの土地を持っていて、それを売れば資産3億円くらいになると言っていました。きっとGさんはお金があることをこのパパ活女子たちにアピールしているんだろうなと思いました。

「Gさんはご結婚されていないんですか?これからこの若い子たちの誰かとご結婚するのを目指してるのか、それとも色んな女の子と死ぬまで遊びまくる、どっちな感じですか?」

麦はGさんに聞いてみました笑

するとGさんは、、、

「私はね、昨年、妻を亡くしてね。それまで一度も浮気はしたことなかったんだよ。でも、もう一人だから、自由に楽しんでるの。もう一度結婚は相手が望むならしてもいいけど、どちらでもいいかな。これ、私の妻、若いときは美人だったんだよ。」

Gさんはそれまで若い女の子たちの写真やメッセージのやりとりの画面を見せてくれていたスマホの画面にちょちょいと触れ、待ち受け画面をこちらに向けて言いました。

Gさんのスマホの待ち受け画面には、Gさんと年相応くらいの上品な女性が小さい子供たちに囲まれ、笑っている写真が写っていました。白髪でショートヘアの、細身で背が高そうな、素敵な女性でした。よく見ると、その隣にGさんも写っていました。そして、子供たちは全部で8人、写っていました。3〜6歳くらいの子たちだったでしょうか。Gさんの奥さんは、子供のうちの1人を抱きかかえていました。この子たちは?と聞くと、お孫さんたちだそうです。

その後、麦とマスターとGさんと何の話をしたか覚えていません。たわいもない話をして、その日は帰ったと思います。その後、そのBARでGさんとまた会うこともありませんでした。その頃から麦はBARに通う頻度が減ったのだったように思います。

あのおじいちゃんは今どうしているんだろう。

あのおじいちゃんは、死んだ奥さんと8人の孫の写真を待ち受けにして、そのスマホでパパ活をしていた。

なんとも言えない哀しさ。

8人の孫に囲まれて、幸せいっぱいだったはず。

子育ても人並みかそれ以上に

夫婦で楽しんで乗り越えてきた

それなのに、奥さんを失って今は

こんな麦なんかに残念に思われている。

最愛の奥さんに先立たれても、自分の人生は続く。子供たちや孫たちはいつまでも自分の側にいてくれる訳ではない。

だからパパ活?それもアリって言う人もいるかもしれないけど、今の麦には受け入れられないな。

だって最後の最後にパパ活なんて台無しの人生じゃんって思うもの。

自分はどうなるんだろう。

自分もいつかそうなっちゃうの?

人間ていうのは結局最後は一人になるんだ。

だから一人でもクヨクヨしないで強くいられる人になりたい。そのためには、今からどうしたらいい?

麦はあのパパ活おじいちゃんの哀しい背中が忘れられない。普通の幸せ、すべて手に入れた、そんな人の最期がこんななんて。

もし麦がこのおじいちゃんの立場になったらどうするか、麦はまだその答えが出せていない。